コンディショニング研究会

カラダのコンディショニングとは?
知っているようで奥深い”コンディショニング”について
分かりやすく解説します。

Q.運動習慣がある人は総じて風邪をひきにくい?

コンディショニングテスト冬編

Aウォーキングといった適度な運動なら感染リスクが下がるが、激しい運動は逆効果

日ごろから運動している人は、病原菌や疲れ、ストレスから体を守る「防衛体力」が高く、風邪をひきにくいのではないかという気がしますよね。実際のところどうなのでしょうか。運動が風邪を予防する効果について、厳密な方法で行われた4つの研究をまとめて解析した報告によると「週に5回以上、定期的にウォーキングなどの適度な有酸素運動をしている人たちは運動していない人たちに比べて風邪をひきにくい」と言えそうです*1

どの研究も、ランダムに運動する人としない人に分け、経過を追っています。解析の対象者は合計281人(平均年齢32.8~60.9歳)で、運動する人たちは8~16週間、早歩き程度の有酸素運動を週5日行う、などというもの。4つのうち2つの研究では、その後2カ月間の経過もみています。その結果、風邪をひいたのは運動した134人では50人、運動しなかった147人では75人。運動した人たちのほうが風邪をひくリスクが27%低いという結果に。

風邪ひき期間も短くなる?!

3つの研究では風邪の罹病期間も調べていますが、運動した人たちではしなかった人たちに比べて罹病期間が3.5日短くなっています。ただし対象者の合計が4つの研究を合わせても281人と小規模なので、運動によって風邪のリスクが27%減る、罹病期間が3.5日短くなる......というのは少々過大な評価かもしれません。

なお、風邪のほか、肺炎なども含む急性呼吸器感染症を運動が予防するかについて調べた11の研究、合計904人について同様に解析した報告では、罹病期間は1.1日短いという結果が出ています*2

運動は"免疫最前線"の細胞、NK細胞を増やす

どうして運動に風邪を防ぐ働きがあるのでしょうか。それは、風邪などの感染症の原因となるウイルスや菌が体に入ったとき、これらと最初に戦うNK細胞という免疫細胞が運動によって増えるから、というのが理由の1つと考えられます*3

NK細胞には、体内で日々生じているがん細胞とも戦い、これを減らしてくれる作用もあります。約144万人ものデータを分析した研究では、日ごろから体をよく動かしている人は各種がんのリスクが低いという結果が出ています*4。適度な運動による防衛体力の向上が寄与していると言えるでしょう。

激しい運動は逆効果になる危険性も!

いずれにしても、軽い有酸素運動を続けるのは風邪予防によさそうです。では、きつめの運動はどうでしょうか。いつもハードなトレーニングをこなしているアスリートたちは、防衛体力も高そうですが......。意外にもそうとは言えないようです。

強化合宿中のラグビー選手の健康状態を1カ月間調べた研究報告があります。合宿を続けるうちに、喉や気管を潤し感染を防ぐ免疫物質、IgAの唾液中の濃度が下がり、風邪の症状の出現数が増えるという関連がみられました(グラフ1)。激しい運動を続けることで病原体に対抗する免疫物質が減ってしまい、風邪などの感染症にかかりやすい状態になったと考えられます*5

【グラフ1】激しい運動は免疫力を下げ、感染リスクを高める

運動の強度と風邪の症状の関係性グラフ
ラグビー選手32人(平均20.4歳、男性)が対象。1カ月の強化合宿期間中に風邪を引いたのは6人。唾液に含まれる免疫物質、IgAの量が減ると同時に、喉の痛みや鼻水、咳などの風邪の諸症状の出現数が増えた。(Int J Sports Med. 2011 May;32(5):393-8より改変)

運動の強度と風邪などの感染症にかかるリスクは、グラフ2のように表されます。まるで英字のJのような曲線を描いていますね。運動しないより、適度な運動を続けるほうが風邪をひきにくいけれど、激しい運動をすると今度は風邪をひくリスクが上がってしまう、というわけです。

【グラフ2】運動の強度と風邪にかかるリスクの関係

運動の強度と風邪の症状の関係性グラフ
激しい運動をした直後

競技後のコンディショニングが大切

1987年のロサンゼルスマラソン(フルマラソン)の参加者を対象にした研究では、ランナーがレース後に風邪をひく確率は、同じようにトレーニングをしてきたけれどレースに参加しなかった人に比べて6倍も高い、という結果が出ています*6。アスリートの間では、競技後に風邪をひくことが多いというのが経験的に知られていましたが、昨今のマラソンブームでトレーニングを始めた市民ランナーも、レース後は風邪をひくリスクが高いということになると注意が必要です。

アスリートも、運動を楽しむ一般の人も、ここぞという勝負では全力で結果を出したいもの。激しい運動をしたあと、防衛体力を落とさないために行いたいことをコンディショニング研究会の代表で日本体育大学体育学部教授の杉田正明さんに聞きました。

「失われた水分を補給し、汗で体が冷えないように速やかに着替えをして、痛みなど気になる場所があればアイシング(水や氷などによる局所の冷却)を。そしてゆっくりと湯船につかり、きちんと食事をとり、たっぷりと眠る。ありきたりのコンディショニング法に思えるかもしれませんが、いつも以上に丁寧に行ってください」とのことでした。

まとめ

軽い有酸素運動を定期的に行うのは風邪の予防や風邪ひき期間を短くするのに役立つ。
激しい運動を続けると、防衛体力を下げてしまうことがある。
防衛体力が下がるレース後のコンディショニングが大切。

*1 Korean J Fam Med. 2014 May; 35(3): 119-26
*2 Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jun 16;(6):CD010596
*3 J Appl Physiol (1985). 2013 Mar 1;114(5):628-36
*4 JAMA Intern Med. 2016 Jun 1;176(6):816-25
*5 Int J Sports Med. 2011 May;32(5):393-8
*6 J Sports Med Phys Fitness. 1990 Sep;30(3):316-28

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