コンディショニング研究会

カラダのコンディショニングとは?
知っているようで奥深い”コンディショニング”について
分かりやすく解説します。

Jリーグ川崎フロンターレ中村憲剛選手×コンディショニング研究会杉田正明代表
データは大事だが縛られすぎず、
体の声を聞いて自分にフィードバックする

コンディショニング・スペシャル対談 Vol.1(後編)Jリーグ川崎フロンターレ中村憲剛選手×コンディショニング研究会杉田正明代表

川崎フロンターレ中村憲剛選手
プロサッカー選手
中村 憲剛 (なかむら けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。2003年、中央大学からJリーグ川崎フロンターレに入団。ポジションはミッドフィールダー。2016年シーズンにはJリーグ最優秀選手賞を受賞。

各界で活躍するプロフェッショナルとコンディショニング研究会アンバサダーがコンディショニング術を語るスペシャル対談。今回は、Jリーグ川崎フロンターレの中村憲剛選手と本研究会代表の杉田正明代表の対談の後編です。2010年に高地で開催されたサッカー国際大会の日本代表メンバーであり、2003年の川崎フロンターレ入団から約15年、今年で38歳となる今もプロサッカー選手として第一線で活躍する中村選手のコンディショニングの秘けつに、同大会に帯同した杉田代表が迫ります。



すすめられたことは試してみて、自分に合うものを残す

――大会当時、杉田代表からみた中村選手のコンディションは?

中村選手と杉田代表

杉田:今日中村選手に会えるから、大会前の合宿から大会中の、日々の検査結果を見てきたけど、全然問題なかったよ。

中村:確かに、高地にも比較的すぐに順応できたし、低地に降りたときもコンディションがよかった。とはいえ当時、すでに30歳目前のオッサンだったし(笑)、コンディショニングには興味があったから、杉田先生のところに行っていろんな話を聞かせてもらいました。何を話していたかはよく覚えてないけれど(笑)。

杉田:中村選手は自分から気楽に話しに来てくれて、うれしかった。

中村:やはり不安はありましたから。自分なりの整え方が合っているかどうか、これまでにやってきたことの裏づけが欲しかったんだと思います。専門家の話が聞けるというのは選手として心強かったです。

杉田:自分でコンディションを整えていく土台ができていたんだと思うよ昔から。

中村:昔も今も、人にすすめられたことはわりと素直にやってみるほうなんで。だから検査のために尿を出すのもコンディション記録用紙を書くのも「ああ必要なんだな」と。それをもとに試合の日から逆算して練習内容が決められて、自分たち選手はそれをやっていけばいいんだという感じでした。

杉田:コンディショニングのために、今も何か測っていることある?

中村:今は体重と体脂肪率くらいですかね、毎日測るのは。データもすごく重要だけれどデータに縛られすぎてもダメで、最終的には自分の感覚を大事にしています。でも感覚に頼り過ぎてもダメ。そのあたりの塩梅が難しいところです。

杉田:試行錯誤して自分にフィードバックして、今があるということですね。体の声がちゃんと聞こえている。こういうコンディションのときはこれをやる、みたいなのは?

中村:今日は体が重いから水分を多めにとって循環をよくしよう、みたいなことはあるけれど特別なことはやっていませんよ。試合前に長風呂したら体が重かったからやめようとか、油っぽいものは普段からあまり食べないけど試合前はより食べないようにしよう、とか。頭が硬くなりすぎてもストレスになるし。

杉田:ストイックではないけれど、いい加減でもない。

中村:そうですね。いろいろと試してみて自分に合うものだけを残していく感じでしょうか。

何もないときこそケア。自分のために時間を使う

――約15年間ずっと第一線で活躍してこられた中村選手、コンディショニングのコツは。

中村選手

中村:体は年々変わっていると思いますが、その変化をおさえるために勝手に自分の中でアップデートしてきた気がします。ストレッチの時間を長くしたり。寝る前のストレッチは欠かさないですね。あとは......青竹踏み10分とか。青竹ってカバンに入るからアウェイにも持って行けるし。

杉田:足の裏は全アスリートにとって大切ですから青竹はいいですね。膝や腰の調子の良し悪し、すべて下から来る。陸上選手もそうです。

中村:体のケアは基本的にはトレーナーに任せていますが、何かがあってからケアをするのではなく、何もないときこそケアをする、そのための時間はしっかりと確保します。あとは運動、食事、睡眠の3つがうまくまわるように自分に時間を使うようにするのがとても大事かと。

杉田:高地でも睡眠は全然問題なかったからね。こういう人は強い。どこにでも順応できてしまう。

中村:若いころに比べたら睡眠時間は短くなりましたけど7、8時間は寝ています。昼寝は昔からの習慣です。若いころは2、3時間昼寝して夜もちゃんと眠れたけれど今は30分くらいかな。

杉田:エビデンス的には昼寝は30分でOK。疲労もとれるし頭もさえる。

中村:自分では普通のことを普通にやっているだけだと思いますが、普通にやるのが現代社会では結構難しいのかもしれませんね。つき合いもあるし、いつでも電話がかかってくるし。自分の時間が奪われやすいというか。でも人と会って話をするのもとても大切なので、そういうところのバランス感覚はかなり大事かなと思います。

休みはしっかり休む、メンタルとコンディションのバランスが大切

――シーズンオフの過ごし方は。

中村選手と杉田正明代表

中村:オフはオフ。しっかり休む。サッカーしません。したくなるまで待ちます。とはいえ休み過ぎても体動かなくなるのもわかっていて、チームのプレシーズンが始まる1週間くらい前から自主トレをするという感じです。

杉田:体が疲れているから休もうという切り替えがちゃんとできているんだね。メンタルの持って行き方がいい。

中村:メンタル面では、もちろん勝ったらうれしいし負けたら悔しくてイライラするけれど、引きずらないようにして次の戦いに向けて切り替えるようにしています。普段のコンディショニングがガタついていると、メンタルにも影響する。その逆もしかりで、すごくリンクしているんじゃないかな。とにかくストレスのないように生活したいと思っているから、ルーチンはあまり作らないようにしています。決めたルーチンができなかったとき、それで崩れるのがいやだし。青竹だって10分踏まないで途中でやめたりしますよ。でも自分のやり方がほかの選手や一般の方々にも通じるかというと、それも違うとは思うけれど。1番いいのは自分にあった調整法をストレスなく自分のペースで続けていくことじゃないかなと思います。

杉田:いろいろ測って管理する人もいるけれど測らなくてもできている、自分の体の声に耳を澄ませ、その通りにやっていれば体調がいいということですね。誰もが簡単にまねできることではないけれど、参考になるいい話を聞かせてもらいました。


対談を終えて
杉田正明代表の談話

中村選手は自分で自分を律するのが本当に上手ですね。コンディショニングのための時間はしっかりと確保し、その時々のパフォーマンスをみて調整していく。けれど「こうしなければならない」と厳しくなりすぎず、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら状況に応じて自分に合うものを上手く取捨選択していくことが、ストレスなく自然にできているのが印象的でした。これこそが15年間もプロサッカーの第一線で活躍し続けられてきた源なのでしょう。われわれも見習いたいところです。

次回11/26更新予定 脳と心のコンディショニングに1日10分、軽い運動を
記憶力アップ、将来のうつ病リスクも減る